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コーチング心理(3):「イマジュネーション・モード」

「イマジュネーション・モード」

ビジネス心理学では“解決志向”(ソリューション・フォーカス)のカウンセリング法が重視されています。これは過去の原因論に対して未来への目的論からカウンセリング論を説いたアドラーの見方とも一致するものです。

確かに目的論から今の自分が“選択する”という面を強調するのは大事ですが、ひとつ問題があります。それは未来をどれだけ具体的に描けるか、実感としてイメージできるような具体性や根拠を感じることができるかと、いうことです。そうした未来の姿を描く力、つまり「イマジュネーション」があってこそ具体的にそれを実感することができるのではないでしょうか。

この心理の問題は哲学でも論じられてきたものです。「イマジュネーション」とは何かを改めて考えるとなると難しいものだからです。

一つ目はイメージが言語的か絵的か、という認知的な課題があります。
二つ目にはそこにシュミレーションするための素材が何か、情報の質と量がどう関わってくるかというナレッジの課題があります。

この二つの問題は区別しなければ論じられませんが、「イマジュネーション」は両者を統合して初めて実質的なものになると考えられるのです。

さらに三つ目としては、目的志向の考えである「実存性」が重要になってきます。アドラーやドラッカーが述べたように、目的を持つことで外界への態度や行動は変わってきます。そこでは認知的フォーカスの差が現れると同時に、必要な素材としてのナレッジが集約し統合されてきます。

つまり、目的志向は人がどう在りたいかという実存性を浮かび上がらせ、同時にそれにふさわしい意識と行動の主体性を生み出す結果になるからです。

成長マインドもこの目的志向と不可分といえます。どちらもが未来への態度を決める相互作用の関係にあり、どちらが上下の概念かを決めるのは難しいわけですが、成長マインドは目的抜きには在りえないといえます。
目的には構造性があり、かつ下位と上位との多様な連続性があります。だとすれば、その目的構造をどう表現できるかは「イマジュネーション」の具体的な姿を知るうえでも重要です。

こうした考え方の前提にはそれが単なる直感的なものとしてではなく、より全体的で構造のあるものとしての抽象化を考える必要があります。抽象化することにより、概念の内容と関連させて理論としての精度が上がってくるためです。

人の成長マインドはいつまでも漠然とした内容で終わるのではなく、抽象化によってメタ認知ができる「持論」へと発展させていくことが求められるのです。
すなわち、抽象化の「持論」と、その他の面である直感化の「イマジュネーション」が分かちがたくひとつの体験を支えるものとなった状態こそが、最大価値を生み出す心の状態であると考えられるからです。

この二つの対立概念をどう統合するかにあります。そこには経験と理論との関係を含めた難問があります。しかし、対立的なものの中には弁証法にいう止揚の新たな発展がみえるはずです。そうした実践的な統合への働きかけで、どうそれらの対立的なものを統合しながら成長そのものへとつなげていくかが重要だからです。

【執筆:匠英一】

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コーチング心理(2):「快善モード」

コーチング心理学の課題(2):「快善モード」

これからの豊かな「心の時代」を築いていくために、 ビジネスにおいてコミュニケーションと能力開発の2つの柱が重要です。そこでまずは心理学として手堅く効果をあげる方法は何かと問えば、「コーチング」ではないでしょうか。

そうした問題意識から10回ほどにわたりコーチングに関連する心理学の内容を整理していきたいと思います。
そこで、まずは仕事で活躍し生きがいを感じていくうえで不可欠なもの「快善モード」というテーマから検討してみましょう。

ここでの「快善」はポジティブ心理学の“快”と“善”を意味するものです。そこにトヨタのカイゼンの考え方を組み込んで実践的な意味を加えたものです。本来、トヨタ自動車のカイゼンは日常の仕事をどう工夫し常に良くしていくかを考え行動する原則として機能しているコンセプトです。その原則はトヨタという価値を創りだす源泉でもあるわけですが、そこにはただ良くする便宜上の仕方以上の内容があります。

それはカイゼンを“危機感”をベースにしていることです。興味深いのはポジティブな危機感ともいうべき感情要素を含む内容にあります。自己と組織の強みを活かす面とこの危機感が結び付いたところにトヨタのカイゼンという行動原則が働くというわけです。

たとえば「多工程もち」という仕組みの考えは、トヨタの社員に複数の工程を持たせることです。その仕組みによって、常識では得られない工夫や柔軟な思考と対処の仕方を学ぶ力ができることをねらいとしています。トヨタのカイゼンに求められるのは、効率性だけでなく同時に学習性の高さであり、そこに人の成長をみるというのです。そして、言われたことをやるのではなく、付加価値を高める知恵を出すことだというのです。

もうひとつ例をあげると、「ムダをなくす」ということにそのカイゼンの考え方のユニークな特徴をみることができます。ムダとは、作り過ぎ、打ち合わせ、移動、在庫、動作、紙など資源、やり過ぎなど。

しかし、とくに問題なのは「やり過ぎ」だというのです。さらに、カイゼンの要となるのが「標準作業」を決めることです。それを決める作業の中で逆にムダを浮きぼりにできるという見方をするのです。そのため標準作業のマニュアルを作ることも、一般のマニュアルのように使われるものではなく、現場の人が自ら書き換えながら作るものとなります。

※【執筆;匠英一】

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コーチング心理(1):「構成概念としての心理

構成概念としての心理の”力”

コーチング心理を理論として整理するうえで、人が心を理解するのは目に見えないものであるがゆえに、どうしても主観的なあいまい性が残るものになりがちです。そこにどんな働き(機能)や効果があるのかは外側に出てくる行動や結果としての成果物でしか評価できません。それゆえ、私たちの日常では「・・力」といった力を軸にしたコトバで表現されることが多いのです。

こうしたコトバによる表記の仕方は「構成概念」とよびます。これは理解が容易になる反面として単純化しすぎたり、複数の要因が含まれているのを無視してしまったりする誤りが起きやすい問題があります。

「意志力」もそうした構成概念のひとつだですが、この概念を形成する要因としてどんなものがあるか、ここで整理しておきましょう。
1)継続した行動を伴うものであること
2)一定レベルの努力を必要とするものであること
3)目的への一貫性を持つ行動であること

つまり、意志力はこの3つの働きで構成された力を合わせた概念なのです。そこから、もし研修などで学習させるようなことを考えるなら、どんな内容がふさわしいかが見えてきます。

たとえば、1番の継続行動については習慣との関係がテーマになります。どうやって良い習慣を増やすようにするかです。2番であれば、努力をするエンジンとなるもの、モチベーションの在り方が問われるわけです。やる気とモチベーションの違いを理解することや、怒りや希望といった感情がどうモチベーションを増幅させるか等のテーマが重要なのです。

そして、3番目は目的という内容そのものの価値や意義づけに関わることがテーマになります。これはミッションの意識を持ったり、どんな意味をそこに見出すかが問われることになるでしょう。

このような3つの課題は、それぞれが深い内容であるために互いに関連がある形で意志力として働くと考えられます。

しかし、研修など目的の明確な教育の場では、絞ったテーマで実践できるようにしないと焼石に水のような話になってしまいがちです。とくに、最近よくあるファシリテーション型研修や、振り返り型研修など現場での課題を反省させる教育手法は注意しなくてはなりません。

講師が“型”をはめた形で行うパターンが多く、カードでまとめたり討論をするのですが、カード依存の思考に陥っていることに気づいていないからです。声に出して互いの気持ちや思いを“語る”プロセスの意味がわかっていないのです。

そのため、カードに書かれた文字が場当たり的な内容であっても、研修中はそれに引きづられたまま終わってしまいます。それは本来、その場にいる参加者同士が互いの声を交流しながら、新しい視点や考えを取り込んでいくプロセスであるはずです。にもかかわらず、カードが主体になってしまい、ゲーム感覚の遊びでそれを絵的な形にまとめたりする「操作思考」に終始してしまうっている例がたくさんあります。

本来、カードなどは川喜多次郎(筑波大学名誉教授)が開発したKJ法がもっとも知られるもですが、カード活用が深く考える場にならずに、書くという作業によって何かを達成した気分になって、互いに意見を交換したように思い込んでしまう。あるいは、こうした過去の例で感想程度の中身を、カードに書き出して終わる程度のものも多いからです。

【執筆:匠英一】

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