マネジメント心理(6):ドラッカーの”営業力”説(その1)

■営業力を問う(その1)

最近の就活事情を調査すると、学生側の就ききたい仕事と企業側がやってほしい仕事のギャップが大きくなっているようです。
端的にいえば、企業側で求めているのは、営業ができる人材です。ところが、営業はノルマを課せたれたり、顧客に断られたり、クレームを言われたりと成果を上げるために競争を強いられることが多いものです。

本来は、他者を説得するというコミュニケーション力が問われる仕事だからこそ、最も心理学が活かせる分野でもあるのですが、残念なことに人気職種のワースト1になっているのです。
そんなことからすると、営業の仕事をしたいと希望すれば多くの企業は間違いなく採用の対象として評価するはずが、需要と供給の関係ではどうもうまくマッチしていないのです。

そこで、「心の科学」として営業力を考えてみましょう。
まずは営業とは何か、それに必要な能力とは何か、この2つの問題を整理しておく必要があります。
ここでは営業を次のように定義しておきます。
「営業は自社の商品・サービスの購入を見込み客に直接・間接を問わずに具体的なアクションを通じて促し、企業の収益に貢献つつ顧客ロイヤルティを創る業務である。」

営業をただ商品というモノを売るだけの職業とみなすのではなく、見えないモノとしての「サービス」という経験価値を顧客(見込み客)に提供するものだということです。
そして、営業は3つの領域に分けて考える必要があります。

第1に「営業プロセス」ということ。これは購買前と購買時、購買後のそれぞれの行動プロセスで何がどう購買の動機やその行動に影響を与えるかを知ることでもあります。

第2に、「営業表現」ということです。わかりやすく言えば営業トークのことで、どう相手に納得のいく表現で語り訴求するかです。

そして、第3として「営業内容」であり、商品知識やどんな欲求やニーズに応えるか、売りのコアとなる内容のことです。

この3つのレベルは異なるものですので、どこを重点に営業活動をするかを理解し、自己の強みとなる領域が何かに合わせてスキルの向上をめざすことが心理学的な面から営業力を向上させていくポイントなのです。

できる営業というと、“営業トーク”のような説得力があることだと考えられがちです。ところが、それは「営業表現」の領域であって営業の一部なのです。
営業トークだけが優れていたとしても、商品価値の内容自体が貧弱ならどうでしょうか? それでは、詐欺的な説得になってしまいます。またプロセスで適切な情報管理をしていないと、クレームがあっても同じ失敗を別の営業担当がするかもしれません。

つまり、現実の営業では、“表現”と“プロセス”と“内容”の3つが相乗効果として働いてはじめて効果となるのです。
営業での戦略的な目標(目的や理念も含む)も重要な“内容”として関わってきます。
とくにプロセスを考えた場合、そこには営業を個人の仕事としてだけでなく、チームや組織としての連携が求められ一貫したサポートや管理が求められるようになります。

だからこそ、企業の総合力として営業を“プロジェクト”という視点から見直すことも必要なのです。
プロジェクトには共有すべき知識・情報のマネジメントや相互の理解、とくに感情的なトラブルへの対処などが重要な課題となってきます。

トラブルは違う人間同士が協力し合う以上は避けてとおることができないものです。それを未然に防ぐだけでなく、発生した時点で修復しながら最善の解決をしていく能力が問われます。この能力が組織の“レジリエンス”(耐性)なのです。

これは個人のレベルとは違い、たとえ、議論をバトルのようにした後でも、決まった事は一緒に協力して行うキャパシティのような力のことです。信頼があるからこそ、バトル的な議論もでき、しかも決まったことについてはまずは協力してチームワークで動けるわけです。

そこにはチームの中での個人の役割意識がプロとしてあり、個々の利益を越えた組織共通の目標への達成に力を合わせるプロ意識があるといえるのです。
このプロ意識という点について、私はドラッカーが述べた「プロフェッショナル性」と同義だと考えるものです。

これは云いかえれば、その仕事の領域で自らの卓越性と組織の発展を統合する力を持つエキスパートのことだといえます。
そして、さらにそこには“ミッション”があります。真のプロの在り方として、ミッションを持った者として定義したところにドラッカーの卓越した見方があるのです。

その観点からドラッカーは次の5つの問いを重視しています。
1:われわれのミッションは何か
2:われわれの顧客はだれか
3:顧客にとっての価値は何か
4:われわれにとっての成果は何か
5:われわれの計画は何か
私はこの5つの意味を理解し実践することが、ビジネス心理のエッセンスでもあると考えます。

【執筆:匠英一】

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